ライターや編集者の仕事をしていると「いいですねー。楽しそう」と言われていたけれど、
「楽しそう?」と、自問自答してしまっていた。
「楽しい」と思うことは基本的になかった。大変だし、困難なことの方が多いから、
やっている最中が「楽しい」わけではない。次から次へと締切に追われて、追われて、
無から有を生み出すことは簡単ではない。常に「何もない」ところに積み上げることは
「楽しく」仕事をしているだけでは決して生み出せない。
真っ白な紙に「さあ、書け」と言われて、常に試験問題を解いているようなものだ。
そして、「問題そのものが書かれていない」のだ。
「食べて行く」ことはどんな仕事でも困難さはつきまとう。
ただ、そこにその仕事が「好き」という気持ちがあれば、続けていけるのだろうと思う。
もちろん、「好き」を仕事にすることもまた、簡単ではないけれど。
昔、お世話になった人の言葉を思い出した。
「Uさんは実力があるかもしれなくても単に運がいいだけだ」と。
その方は編集関係の仕事がしたかったらしいけれど、生み出すことには興味がなさそうだった。
それなのに、編集関係の仕事ができることに「感謝しろ」と言う。
私はその人の仕事ぶりに首をかしげていた。
少しも「楽しそう」ではなかった。苦しそうだった。
その生き方に「早死にしそうだ」と感じていた。
そして、予感通り、40代で亡くなった。
30代で死を覚悟した私はまだ生きている。何が違うのか。ふと、考えてみる。
やっぱり、私は運がよかっただけなのか。
ただ、私は体に悪いことはできるだけしないことにしている。
精神面だけは別だけど。これだけは避けようもない。日々は楽しくはない。